「病院に行きたくない」と言う親へ。家族ができる寄り添い方と在宅医療の選択肢
「最近、親の体調が心配なのに、病院へ行こうとしない」
「何度受診を勧めても、大丈夫だからと言われてしまう」
「このまま放っておいて、本当に大丈夫なのだろうか」
離れて暮らす親御さんや、高齢になったご家族の健康を心配するなかで、このような悩みを抱える方は少なくありません。以前は自分から病院に通っていたのに、年齢を重ねるにつれて通院を嫌がるようになった。体調が悪そうに見えても、「病院は行きたくない」と言われてしまう。
心配だからこそ受診してほしいのに、何度も説得するうちに親子で言い争いになってしまうこともあるでしょう。
しかし、病院に行きたがらない背景には、身体的な負担や不安、生活に対する本人なりの考えが隠れている場合があります。
大切なのは、無理に病院へ連れていくことだけを考えるのではなく、なぜ受診したくないのかを理解することです。
また病気や身体の状態によって通院が難しくなっている場合には、医師がご自宅を訪問する「訪問診療」が選択肢になることもあります。
東京都立川市の諏訪の森クリニックでは、女性医師を中心に、患者さまとご家族の想いを大切にした在宅医療を行っています。
今回は、高齢の親御さんが病院に行きたがらない理由や、ご家族ができる接し方、受診を考えたいサイン、そして在宅医療という選択肢についてご紹介します。
なぜ高齢の親は病院に行きたがらないのか?
親御さんが受診を嫌がると、「どうして自分の健康を大切にしてくれないのだろう」と感じることもあるかもしれません。
しかし、病院に行きたくない理由は一つではありません。
本人の言葉だけではわかりにくい事情があることもあります。
1.病院まで移動することが身体的な負担になっている
高齢になると、以前は問題なくできていた外出が大きな負担になることがあります。
例えば、玄関まで歩くことや階段を下りること、車や電車に乗ることなどです。
病院に到着してからも、受付や検査、診察、会計などで長時間待つことがあります。
足腰に痛みがある方や、息切れしやすい方では、通院だけで疲れてしまう場合もあるでしょう。
「病院に行きたくない」という言葉の背景に、「本当は行きたいけれど、身体がつらい」という気持ちが隠れていることもあります。
2.病気が見つかることへの不安がある
体調の変化を感じていても、検査によって病気が見つかることを怖いと感じる方もいます。
「大きな病気だったらどうしよう」
「入院することになったら困る」
「今の生活が変わってしまうかもしれない」
こうした不安から、受診を避ける場合があります。
このようなときに、「病気だったらどうするの」と不安を強める言葉をかけても、かえって受診への抵抗感が大きくなることがあります。まずは何を心配しているのか、本人の気持ちを聞くことが大切です。
3.自分はまだ大丈夫だと思っている
親御さん自身は、身体の変化をそれほど深刻に感じていない場合もあります。
「少し休めば治る」
「年齢のせいだから仕方がない」
「これくらいなら病院へ行く必要はない」
そう考えていることもあるでしょう。
一方、ご家族から見ると、食事量が減っていたり、歩く速度が遅くなっていたりするなど、以前との違いが気になることがあります。
本人と家族では、体調に対する受け止め方が異なる場合があります。
4.家族に迷惑をかけたくないと思っている
通院するためには、家族に車を出してもらったり、仕事を休んで付き添ってもらったりする必要がある方もいます。そのような状況で、「家族に負担をかけたくない」と考え、受診を遠慮する場合があります。病院に行きたくないというよりも、周囲に気を使っている可能性もあるのです。
5.過去の通院経験や認知機能の変化が影響している
過去の診察や入院でつらい経験をしたことが、病院への抵抗感につながる場合もあります。また、認知症などによって、受診の目的や必要性を理解することが難しくなっているケースもあります。ただし、病院へ行きたがらないという理由だけで、認知症と判断できるわけではありません。本人の理解の仕方や生活の様子に変化がある場合は、医療者に相談することが大切です。
受診を嫌がる親への接し方|家族が意識したい4つのこと
親御さんの健康が心配になるほど、「早く病院へ行ってほしい」という気持ちが強くなるものです。しかし、本人が納得していない状態で受診を迫ると、かえって拒否が強くなることもあります。ご家族ができることを、4つのポイントに分けて考えてみましょう。
1.まずは病院に行きたくない理由を聞く
最初から受診の必要性を説明するのではなく、本人が何を負担に感じているのか聞いてみましょう。
例えば、次のような声のかけ方が考えられます。
「病院に行くのは、何が一番大変?」
「身体がつらいの?それとも病院そのものが苦手?」
「何か心配なことがある?」
本人が理由を話してくれたら、すぐに否定せず、まずは受け止めることが大切です。
理由がわかることで、通院方法を工夫したり、相談先を変えたりするきっかけになります。
2.命令ではなく、心配している気持ちを伝える
「絶対に病院に行かなきゃだめ」
「どうして言うことを聞いてくれないの」
このような言葉は、親御さんにとって責められているように感じられる場合があります。
代わりに、ご家族自身が感じている心配を伝えてみましょう。
例えば、
「最近、少し歩くのが大変そうだから心配しているよ」
「今の生活を長く続けてほしいから、一度相談できたら安心だな」
という伝え方です。
大切なのは、親御さんの気持ちを無視して結論を急がないことです。
3.本人が大切にしている生活を一緒に考える
高齢になっても、自分らしい生活を続けたいという思いは変わりません。
「家で過ごしたい」
「好きな食事を楽しみたい」
「庭の手入れを続けたい」
そうした希望を持っている方もいらっしゃいます。
受診を勧めるときも、病気を見つけることだけを目的にするのではなく、本人が大切にしている生活を続けるために健康状態を確認するという考え方が役立つことがあります。
「これからも好きなことを続けられるように、一度身体の状態を確認してみない?」
という声のかけ方も、一つの方法です。
4.家族だけで解決しようとしない
何度話しても受診を嫌がる場合、ご家族だけで説得し続ける必要はありません。
普段から関わりのある、かかりつけ医やケアマネジャー、訪問看護師などに相談することもできます。
また、地域包括支援センターは、高齢者の介護や生活に関する相談窓口です。
親御さんの受診について困っている場合にも、状況に応じて相談先を案内してもらえることがあります。
ご本人の意思を尊重しながら、必要な医療につなげる方法を一緒に考えていきましょう。
「様子を見よう」で済ませず、医療者に相談したいサイン
親御さんが病院に行きたがらない場合でも、体調の変化をそのままにしてよいとは限りません。特に、以前と比べて明らかな変化が見られる場合は、医療機関への相談を検討することが大切です。
例えば、次のような変化です。
- 食事や水分を取る量が減ってきた
- 最近、体重が減ってきた
- 歩くのが遅くなったり、転びやすくなったりした
- 息切れやむくみが以前より目立つ
- 薬の飲み忘れが増えている
- 物忘れや生活上の困りごとが増えている
- これまでできていた身の回りのことが難しくなった
こうした変化には、加齢だけでなく病気が関係している場合もあります。
すぐに重い病気があると決まるわけではありませんが、変化が続く場合や生活に支障が出ている場合は、医療者に相談しましょう。
緊急の対応が必要な症状には注意
突然の強い胸痛、明らかな呼吸困難、意識がない・反応が悪い、突然片側の手足に力が入らなくなったなどの症状がある場合は、緊急の対応が必要です。このようなときは、本人が病院に行きたがらない場合でも、ためらわず119番へ連絡してください。
急な意識や言動の変化も、病気による可能性があるため注意が必要です。
通院が難しくなった親には「訪問診療」という選択肢も
病院に行きたがらない理由が、身体的な負担や病気による通院の困難さにある場合、訪問診療が選択肢となることがあります。訪問診療とは、医師が計画的・定期的にご自宅や入居施設を訪問し、診察や薬の処方、必要な医学的管理などを行う医療サービスです。通院することが難しい患者さまが、住み慣れた場所で継続的に医療を受けられるよう支える仕組みです。
訪問診療は「病院に行きたくない」だけで利用できる?
訪問診療の対象となるのは、原則として病気や障害などによって通院が困難で、継続的な診療が必要な方です。そのため、単に病院へ行きたくないという希望だけで、必ず利用できるわけではありません。またご本人が訪問診療を希望していない場合に、家族の判断だけで一方的に開始するものでもありません。
ご本人の病状や通院の困難さ、希望などを確認しながら、医師が必要性を判断します。
病院への受診を嫌がっている場合でも、その背景に身体的な問題があるかどうかを含めて相談することが大切です。
自宅で受けられる医療にはどんなものがある?
訪問診療では、一般的に次のような医療を受けられる場合があります。
- 定期的な診察と健康管理
- 高血圧や糖尿病などの慢性疾患の管理
- お薬の処方や調整
- 血液検査や尿検査など
- 必要に応じた点滴や医療的な処置
- 痛みや苦痛を和らげる緩和ケア
ただし、実施できる診療や処置は医療機関によって異なります。
また、CTやMRIなどの詳しい画像検査、手術や集中治療などが必要な場合は、病院での対応が必要になります。
家族の負担を軽くするためにも、在宅医療の相談を
親御さんが通院できなくなると、ご家族にもさまざまな負担が生じることがあります。
通院の付き添いや移動の介助、薬の管理、体調の変化への対応などです。
仕事や育児と介護を両立している方にとっては、負担が大きくなる場合もあるでしょう。
訪問診療を利用することで通院に伴う移動負担が軽減される場合がありますが、在宅療養にも日常的な支援が必要です。
そのため、医師による訪問診療だけでなく、訪問看護や訪問リハビリテーション、介護サービスなどとの連携も大切になります。
ご家族がすべてを担う必要はありません
在宅療養では、医師・看護師・薬剤師・理学療法士・ケアマネジャーなど、多くの専門職が関わることがあります。
患者さまの状態や生活環境に合わせて支援を組み合わせることで、ご本人だけでなくご家族の負担軽減にもつながる場合があります。
ご家族の負担が大きい場合は、介護サービスや短期入所などの利用についても相談してみましょう。
諏訪の森クリニックが大切にしている「その人らしい在宅医療」
諏訪の森クリニックは、東京都立川市にある在宅療養支援診療所です。
院長の木村みどり医師をはじめ、女性スタッフが多く在籍しており、患者さまやご家族の想いを大切にした診療を行っています。
当院が大切にしているのは、病気の治療だけではありません。
患者さまが、住み慣れた自宅でどのように過ごしたいかという希望にも耳を傾けています。
「これからも自分の家で暮らしたい」
「好きなことを続けたい」
「家族と穏やかな時間を過ごしたい」
そのような想いを大切にしながら、必要な医療や療養支援について一緒に考えていきます。
患者さまの「やりたい」を大切にするリハビリ
諏訪の森クリニックでは、介護保険を利用した訪問リハビリテーションも行っています。
当院では、単に身体を動かすことだけでなく、患者さまが楽しみながら取り組めることを大切にしています。
例えば、好きな歌を歌ったり、カフェでお茶を楽しんだり、畑仕事をしたりすることなども、患者さまの希望や状態に応じて生活の目標として考えます。
「病院に行きたくない」という言葉の背景に、慣れ親しんだ生活を大切にしたいという気持ちがある場合もあります。
その想いを尊重しながら、医療と日常生活をどのように両立させるか考えることが、在宅医療では重要です。
立川市を中心に周辺地域の訪問診療にも対応
諏訪の森クリニックでは、立川市を中心に訪問診療を行っています。
また、クリニックから半径約5km圏内の隣接地域についても、ご相談を受け付けています。
周辺には、国立市、国分寺市、日野市、昭島市、東大和市、武蔵村山市、小平市、福生市などがありますが、各市の全域が対象となるわけではありません。
実際の訪問可否は、ご住所や診療体制などによって異なります。
また、ご自宅だけでなく、有料老人ホームなどの介護施設への訪問についてもご相談いただけます。
受診を嫌がる親について相談するときの流れ
親御さんが病院へ行きたがらない場合、最初から訪問診療を開始すると決める必要はありません。
まずは、現在の状況や通院の難しさについて相談することが大切です。
諏訪の森クリニックでは、一般的に次のような流れで訪問診療の相談を進めています。
1.ご家族などから相談する
ご本人、ご家族、ケアマネジャー、通院中の病院の相談員などからお問い合わせいただけます。
現在の病状や通院状況、生活上の困りごとなどをお伝えください。
2.診療前の面談を行う
訪問診療の開始前に、医師等との事前面談を行います。
在宅医療の仕組みや診療内容、緊急時の連絡方法などについてご説明します。
ご本人が診療に不安を感じている場合は、その気持ちについても相談することが大切です。
3.必要性を確認して診療を開始する
医師が訪問診療の必要性を判断し、ご本人の意思や病状、生活環境などを確認したうえで、診療方針や訪問スケジュールを検討します。
訪問診療の開始が難しい場合も、必要に応じて適切な相談先を検討していきます。
よくある質問(FAQ)
Q.親が病院に行きたがらないとき、無理に連れていってもいいですか?
A.緊急性がない場合は、まず本人の気持ちや受診を嫌がる理由を確認することが大切です。本人が理解して意思表示できる場合は、その意思を尊重しながら医療者と相談しましょう。ただし、生命に関わる緊急症状がある場合は、速やかな救急対応が必要です。
Q.病院に行きたくないという理由だけで訪問診療を利用できますか?
A.訪問診療は、原則として病気や障害などによって通院が困難な方が対象となります。単に病院が苦手という理由だけで必ず利用できるわけではありません。現在の病状や通院の困難さを医師に相談してください。
Q.親が認知症で受診を嫌がる場合はどうすればよいですか?
A.まずは受診を嫌がる理由や、本人が理解しやすい伝え方を考えることが大切です。認知症がある場合でも、ご本人の意思や希望をできるだけ尊重する必要があります。判断や対応に迷う場合は、かかりつけ医や地域包括支援センターなどに相談しましょう。
Q.離れて暮らす親について、家族だけで相談できますか?
A.諏訪の森クリニックでは、ご本人だけでなく、ご家族やケアマネジャーなどからの相談も受け付けています。ただし、具体的な診療や個人情報の共有については、ご本人の意思や状況に応じた確認が必要です。
Q.訪問診療を受けると、病院へ通う必要はなくなりますか?
A.必ずしもそうではありません。専門的な検査や治療が必要な場合は、病院での受診や入院が必要になることもあります。訪問診療と病院での医療を組み合わせながら療養を続ける場合もあります。
Q.家族が付き添えなくても訪問診療を受けられますか?
A.ご家族の同居や毎回の立ち会いが必須とは限りません。ただし、患者さまの病状や生活環境、必要な支援によって対応は異なります。利用を検討する際は事前にご相談ください。
まとめ|「病院に行きたくない」の言葉の奥にある気持ちを大切に
高齢の親御さんが病院に行きたがらないとき、ご家族は心配になるものです。
しかし、その言葉の背景には、移動による身体的な負担や病気への不安、家族への遠慮など、さまざまな理由があるかもしれません。
大切なのは、ただ受診を説得するのではなく、本人が何を負担に感じ、これからどのような生活を送りたいと考えているのかを知ることです。
病気や身体の状態によって通院が難しくなっている場合には、訪問診療という選択肢もあります。
また、ご家族だけで抱え込まず、医師や看護師、ケアマネジャー、地域包括支援センターなどに相談することも大切です。
諏訪の森クリニックでは、女性医師を中心に、ご本人とご家族の想いを大切にした在宅医療を行っています。
「親の通院が難しくなってきた」
「受診を嫌がっていて、どうしたらよいかわからない」
「住み慣れた自宅で医療を受けられるか相談したい」
そのようなときは、お気軽にご相談ください。
受診・ご相談のご案内
在宅療養支援診療所 諏訪の森クリニック
所在地:東京都立川市柴崎町2-17-21 2F
電話番号:042-521-0022
電話受付:平日9:00〜17:00
訪問診療エリア:立川市を中心に、周辺地域は要相談
関連ページ
あわせて、当院のブログもご覧ください。
- 第1弾:立川市で訪問診療を受けるまでの流れ
- 第2弾:訪問診療の選び方|安心して在宅療養を続けるための5つのポイント
- 第3弾:自宅でどこまで診てもらえる?訪問診療でできること・難しいことを解説
リンクは掲載後に作成します
監修・医師紹介
諏訪の森クリニック 院長 木村 みどり
当院では、女性医師を中心に、患者さまとご家族の想いを大切にした在宅医療を行っています。
病気や身体の状態だけでなく、患者さまが住み慣れた場所でどのように過ごしたいかという希望を大切にしています。
木村みどり院長は、2006年に諏訪の森クリニックを開業しました。
在宅医療では、患者さまができるだけ住み慣れたご自宅で、その人らしい生活を続けられることを大切にし、医療・看護・リハビリの連携に取り組んでいます。
経歴・保有資格の詳細はこちら→諏訪の森クリニック 院長紹介
参考文献・参考情報
- 厚生労働省「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン及び事例集」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/miyorinonaihitohenotaiou.html - 厚生労働省「在宅医療・介護の推進について」
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/zaitaku/dl/zaitakuiryou_all.pdf